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初診時にうつ状態で訪れる患者さんのなかに、数ヶ月前にあるいは何年も前に躁状態のエピソードをもっていらっしゃる方がいます。
躁状態とは普通では考えられない程、気分が爽快で気持ちが高揚した状態をいいます。おしゃべりで駄洒落を連発するようになります。自分の能力に自信がみなぎり「何でもできる」ように思え、周囲の人たちが全く能力がないように感じます。
そのために気分が大きくなって、みんなに毎晩のように飲食をおごったり、返済能力を超えた多額の借金をしたり、個人の責任の範囲を超えた大きな取引を自分だけの判断で決めたりします。セールスを担当する人はかなり業績を伸ばしたりしますが、いつもうまくいくとは限りません。 職場では気分が大きくなって上司に傲慢な態度をとったり、怒りっぽくなって人前で部下を平気で怒鳴ったりします。明るく快活な状態と不機嫌で怒りっぽい状態が混在するので周囲はどうしてよいものか戸惑ってしまいます。一方、性欲が高まることが多くそのうえ抑制が効かない為に、男性なら会社の若い女子社員に卑猥な言葉をあびせてひんしゅくをかったり、あるいは気味悪がられることがあります。
このような躁状態が数ヶ月から数年続くエピソードを挿入するうつ病は躁うつ病と以前は呼ばれていましたが、躁状態とうつ状態の二つの極端な気分の波が現れてくることから近年では双極性障害と呼ばれるようになりました。ちなみに入院しなければならない程の躁状態が見られるものを双極T型障害、入院まで考える必要のない場合は双極U型障害と診断されます。
とくにU型障害は一般に診断が難しく、専門の医師さえ見逃していることが多いと言われています。上で説明した躁状態はまわりの人が見ても明らかに変だと気付きますが、U型障害の躁状態の場合はこのような症状はほとんど目立たず、その後のうつ状態のエピソードで病院を訪れます。そこに抗うつ剤を投与すると、一見劇的に改善したように見えてしまいますが、その後の躁病エピソードを誘発させてしまいます。そしてまた次のうつ病エピソードを結果的に招くこととなります。これを何年も繰り返すとT型障害に移行すると言われています。
双極性障害については遺伝的な原因が昔から言われ続けてきた精神疾患のひとつであり、生涯にわたって再発のリスクがつきまといます。再発予防の観点からは炭酸リチウム、抗てんかん薬のバルプロ酸、カルママゼピンそしてラモトリギンらが選択薬剤となっています。リチウムの効果が確認されてからの40年間で数百万例の患者さんが躁病発症から部分的にあるいは完全に開放されたといわれています。
急性期の躁病に対してはリチウムを即座に投与しますが、以前は双極性障害の抑うつ状態に抗うつ薬の投与が行われていました。現在の指針では上述した理由で抗うつ剤の単独投与は禁忌とされています。尚、リチウムの投与に関しては安価でありますが、有効血中濃度の範囲が狭いため、この薬の特性について豊富な知識をもつ精神科医に限定される傾向があります。最近では統合失調症の治療に使用される抗精神病薬がリチウムと同等な効果があることが分かっており、そのうちの2剤は保険適応が認められています。
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