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うつ病(大うつ病性障害)major depressive Disorder

現代型うつ病の問題点|「うつ病」という訳語が生む誤解

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 欧米の「大うつ病性障害(Major Depressive Disorder)」という診断名は、本来“特定の病態”を指します(精神神経学雑誌:2012年114巻886-905頁,2013年 115巻711-728頁)。しかし日本語でうつ病と言えば、軽い気分の落ち込みから重度の内因性うつ病まで、すべてが「うつ」「うつ病」と呼ばれてしまうために多くの誤解が生じ、「”うつ病”という診断自体が社会的に揺らいでいる」という現象を引き起こしました。

1. 社会問題になった事もある「現代型うつ病」とは

「現代型うつ病」「新型うつ病」という言葉は、主にマスメディアや一部の専門家によって使われた非公式な呼称で、医学的な診断名ではありません。そのため、定義や使用範囲には曖昧さがあり、注意が必要です。これらは 、古典的なメランコリー型うつ病の延長線上にはなく、自己中心性や他責性、回避傾向といった特徴を持ち、対人関係における違和感として周囲に認識されやすい新たな病態と捉えられています。こうした特徴は、大うつ病とは異なる対応が求められる事もあり、両者を混同すると適切な支援が難しくなる可能性があります。

2. なぜ誤診が起こりやすいのか

DSMのMajor Depressionの誤解
DSMのMajor Depressionは、本来は診断項目にある症状の数だけで診断するものではなく、症状の質・背景・経過を総合的に判断するものです。 しかし臨床現場では、 「抑うつ気分+興味の喪失=うつ病」 と理解されることがあり、心理社会的要因による“うつ状態”まで Major Depressionと診断されやすい 傾向があります。

治療の画一化
多くの医療機関では、抗うつ薬と休養が治療の中心です。 しかし現代型うつ病を含む大うつ病性障害では、薬物療法だけでは改善しにくい ケースが少なくありません。背景にある対人関係や認知の偏りが扱われないまま、「薬が効かないうつ病」と表現されることもあります。
診察時間の制約
短い診察時間では、発症の背景や性格傾向、行動パターンを丁寧に把握することが難しく、誤診が増えやすい状況があります。また、1999年ごろ日本で販売が開始されたSSRIという抗うつ薬の登場も「安易な投薬を助長した」と指摘されています。

3. “Depression” の誤訳と誤解の背景

1980年代初頭にDSM-IIIが導入されるまで、日本の医学教育ではドイツ精神医学が主流であり、うつ病は「内因性」が教科書の中心的な概念でした。そこでは、病気としてのうつを意味するドイツ語 Depression が用いられており、英語の depression(気分の落ち込み〜大うつ病性障害)と綴りが同じであることから、両者が混同される素地が生まれました。
その結果、英米でいう depression が必ずしも「病気としてのうつ」を意味しないという事実が十分に共有されず、診断の枠組みが過度に広がった可能性があります。こうした背景のもと、日本独自のうつ病概念が形成されたと指摘されています(精神神経学雑誌 2022)。

このような言語的・文化的な誤解は、以下のような混乱を引き起こしています:
 • 軽度の気分低下から重度の内因性うつ病までが、すべて「うつ病」と一括りにされる
 • 医療者であっても、「抑うつ症状」と「大うつ病性障害」を区別せずに用いることがある
 • 心理社会的ストレスによる“うつ状態”までもが、うつ病と診断されやすくなる
こうした混同は、「うつ病=抗うつ薬と休養」といった画一的な治療方針を助長し、結果として大うつ病性障害の理解を困難にし、「現代型うつ病」という言葉が生まれる背景にもなったと考えられます。

4. 大うつ病性障害の特徴

現代型うつ病と呼ばれる状態との共通点として、次のような傾向があります。
 • 心理社会的ストレスが強く関与
 • 症状が状況によって変動しやすい
 • 対人関係の葛藤や自己評価の揺らぎが背景にある
 • 「疲れやすい」「眠りすぎる」「イライラ」などの症状が目立つ
 • 休養だけでは改善しにくい
このように従来の内因性うつ病とは異なる理解が必要です。
 一方、現代型うつ病の「特定の場面、状況に限られる」「趣味や娯楽には興味をもてる」「日常全般での機能の障害が明確でない」などは大うつ病性障害の抑うつエピソードを満たしていないと指摘されています。これらを混同してしまうと、適切な治療や支援の方向性を誤るリスクもあるため、正確な理解が必要です。

5. なぜ心理療法が必要なのか

どちらも共通して、
 • 認知の偏り
 • 回避行動
 • 対人関係のパターン
 • 自己評価の揺らぎ などが症状の維持に関わることが多くあります。
そのため、薬物療法だけでは十分に改善しないケースが多い という臨床的傾向があります。認知行動療法(CBT)は、思考のクセや行動パターン、対人関係の問題に働きかける治療法で、現代型のうつ病の背景にある問題にアプローチできるといわれています。

6. まとめ

大うつ病性障害や現代型うつ病は「薬が効きにくいうつ病」ではなく、 “理解されにくい背景を持つうつ状態” と捉える方が適切です。
 • DSMの理解不足
 • “depression” の誤訳・誤解
 • 治療の画一化
 • 心理社会的要因の見落とし
これらが誤診の背景にあります。DSMによる形式的な診断では、患者の性格傾向や社会的背景が見落とされやすく、適応の問題を抱える人々も「うつ病」とされるようになりました。現代型うつ病は、こうした診断の限界と、周囲が感じる違和感とのギャップから生まれた社会的な現象といえます。 従って現代型うつ病を含む大うつ病性障害には薬物療法だけでなく心理療法(カウンセリングやCBTなど)が重要となるケースが多い という認識が必要です。

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Meguro Mental Clinic目黒心療クリニック

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